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2020.06.17 四條由貴

あなたの知らないカビの世界|株式会社テクノスルガ・ラボ

あなたの知らないカビの世界|株式会社テクノスルガ・ラボ


ジメジメ…ムシムシ…、湿気が不快な季節がやってきました。この時期は、お風呂や押入れなど家の中に発生するカビが気になりませんか?けれど、カビは、湿度の高い梅雨や夏に限らず、いつでも、家の至る所で生息しているのだとか。私たちの身近な所にいるけれど、実態をよく知らないカビ。そんなカビの世界を、少しだけ覗いてきました。

解説してくれたのは、株式会社テクノスルガ・ラボ 技術部 菌類グループ リーダー、博士(農学)である喜友名 朝彦(キユナ トモヒコ)さん。同社は、微生物分析受託サービスの先駆けとして、環境中からの微生物分離・培養、顕微鏡観察、生理性状試験、遺伝子解析、化学分析、微生物株保存などを行っています。また自社内や社外の研究者との共同で研究・開発や論文執筆を精力的に行っています。喜友名さんは、文化財(古墳壁画)の菌類(カビ・酵母)による生物劣化の研究にも携わっていた、「カビ愛に溢れる」研究者です。

 
土壌、森林、文化財、生活環境、様々な環境のカビを調査研究する喜友名さん

 

カビも生きもの 有害・無害は人間の都合


カビは微生物に分類されます。微生物とは、目に見えない生物の総称で、細菌(納豆菌、乳酸菌、大腸菌など)、菌類(カビ、きのこ、酵母)、微細藻類、原生動物、ウイルスなどが含まれます。微生物は、細胞に核を持たない原核生物と、動物や植物と同様に核を持つ真核生物に分けられます。細菌は、原核生物に分類され、真核生物には菌類、微細藻類、原生動物が属します。よって細菌と菌類には、細胞構造に大きな違いがあり、全く別の生き物だそうです。真菌に属すカビは、まるで植物のように立体的に成長する多細胞生物です。顕微鏡で拡大してみると、茎や花のような部分もあり、種類によってカタチや色も様々。嫌われもののイメージが強いカビですが、個性的な姿に、可愛らしさ、美しさを感じられそうです。

喜友名さんは、「カビは、我々、人間と同じ生き物で、自分に適した環境でひたむきに生育しているだけ。有害、無害の分類は人間の都合」と言います。
例えば、麹菌(コウジカビ)は、アミラーゼという酵素を出し、でんぷんとブドウ糖に分解します。味噌や醤油、日本酒などを作る手助けをします。アオカビは、チーズ作りに利用されます。ミカンや餅などを緑色の無残な姿に変えてしまうのも、またアオカビの仲間なのです。

 
日本酒、味噌や醤油など作るときに使われるキコウジカビ Aspergillus oryzae(黄麹菌)

 

カビと上手に付き合う方法


どんな所にも、カビは生えます。木や革といった天然素材に限らず、CDやカメラのレンズ、本、金属、プラスチックなど、様々な素材の上に発生します。中には湿気よりも、乾燥を好むカビもあります。また幅広い温度帯で生存しています。
低温を好むものは、冷蔵庫で繁殖します。野菜や食品のパッケージなど様々な所にカビの胞子は付着しているので、全て取り除くことは不可能です。またカビは成長がゆっくりであるため、神経質にならず、たまに乾拭きをするなど冷蔵庫内の水分を拭い、エタノールで消毒すると繁殖を抑えられるでしょう。多くのカビは、25℃程度で繁殖が活発になります。夏季の押入れは、温度が上がりがちです。すのこなどを敷き、空気が流れるように隙間を作りましょう。またカビの成長には酸素を必要とするため、冬布団や衣類を保管するときは、脱酸素(真空)状態にしておくこともおすすめです。気を付けたいのは、30℃~37℃で活発になるカビ。ヒトの体温に近い温度帯で生息するカビを、免疫力が低下している人が大量に吸い込むと、病気を引き起こす場合があります。

家の中のカビの繁殖を抑える対策として、効果的なのは「換気」です。エアコンの除湿で部屋がカラりと乾燥していても、空気中にカビの胞子は漂っています。先に述べたように乾燥を好むカビもいます。また、カビをエサにするダニが発生する危険性も。部屋に風を通すことで、これらを防ぐことが可能です。どんな温度帯にもカビは存在するため、生活の中でうまく付き合っていくことが大切です。

 
洗濯機の中に発生する黒カビの一種、オクロコニス (Ochroconis sp.)

 

カビそのものよりも怖いのは、カビ毒


繁殖する過程で、カビは様々な二次代謝産物(化学物質)を作り出します。抗生物質であるペニシリンは、アオカビの二次代謝産物です。ヒトや動物の病気治療に役立つものがある一方で、健康に害を及ぼすものもあり、これらはカビ毒といわれます。肝臓、腎臓、肺、脳などの障害、発がん性といった危険をもたらすのです。
身近な食材では、パンや餅に生えるカビも、カビ毒を発生させます。カビそのもの(菌糸体や胞子)は、加熱により死滅しますが、カビ毒は熱に強く、分解することは困難です。カビの生えた部分を除去しても、カビ毒は食品の内部に分散しているため、取り除くことも困難です。一部にでもカビの生えた食品を見つけた場合は、食べないようにしましょう。

カビは、人間にとって都合の良いもの、危険なものがありますが、適切な対処法で、快適に生活していきましょう。


<取材協力>
株式会社テクノスルガ・ラボ
https://www.tecsrg.co.jp/

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