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頂上を “目指さない” 富士山ツアーのススメ

頂上を “目指さない” 富士山ツアーのススメ
富士山の山開きの日が、近づいてきました。山梨県側のルートは7月1日、静岡県側のルートは7月10日にそれぞれ開通し、登頂できるようになります。そんな中、あえて5合目より下を歩いて楽しむツアーがあるのをご存じですか?

「イメージと違う富士山を知ることができる」と好評を呼んでいるのは、頂上を目指さない富士山ツアーです。ツアーガイドの鈴木渉(わたる)さんに、富士山歩きの魅力を聞きました。
 

富士山の魅力は、足元にこそ広がっている


ー「頂上を目指さない富士山ツアー」とは、どのようなツアーですか?
「頂上を目指さない富士山ツアー」は、通常の登山客が見ることのない、豊かな自然に触れていただくツアーです。山頂を目指す富士登山のほとんどは、5合目からの出発になると思います。当ツアーでは、5合目から下の山腹を、ゆっくり歩きながら散策していきます。

静岡駅に集合をして、富士山までバスで向かいます。ランチのお弁当もこちらで用意していますので、山の中で一緒に食べましょう。山登りに慣れていない方でも参加できるので、女性の参加者が多いですね。年齢は、若い方からご年配の方まで幅広くいらっしゃいます。

ー鈴木さんは、富士登山のガイドもしていると聞きました。あえて頂上を目指さないツアーを、始めたきっかけは何ですか?
富士登山が、山登りを始めるきっかけ」でもあり「登山をあきらめてしまう原因」にもなっているケースが、多かったことです。初めての登山で、富士登頂にチャレンジする人はたくさんいます。ただ、つらくて「登山は、もうこりごりだ!」と、山から離れてしまう人も多いんです。

5合目と言えども、標高は約2,400メートルもあります。森もなければ、樹も生えていません。そんな日本一空気の薄いところを登っていくのは、もはや修行です。しかし、5合目よりも下に目を向ければ、豊かな自然が広がっています。そのあたりをゆっくり散策することで、山歩きの楽しさに気付いてもらえたらと始めました。

ー具体的には、どのようなツアーがオススメですか?
これからの季節にオススメなのは、ロングトレッキングです。

▲photo by Wataru Suzuki

6合目にある巨大な宝永火口を眺めてから、標高差で1,000メートルほど山を下るツアーです。黒々とした溶岩石に覆われて、火星のようにダイナミックなゾーンから、最終的にはブナやカエデなどの広葉樹の森に着きます。草木の移り変わりのグラデーションは、見ものですよ。

北口本宮冨士浅間神社から出発する、信仰登山の名残をめぐるツアーもオススメです。

▲photo by Wataru Suzuki

いにしえより、富士山そのものが神様だと考えられ、富士登山は信仰の対象でした。そうした側面を知ってもらったり感じてもらったりするのも、趣きがあって良いと思います。神社に寄るのは、1日の山旅のアクセントにもなって良いですしね。
 

勝ち負けの世界から、自然調和の世界へ


ー鈴木さんは、昔から山の自然や山歩きに精通していたのでしょうか?
いえ、大学ではトライアスロン部、それ以前は野球部でした。勝ち負けがすべてという世界にいながらも、僕は、スポーツを“楽しむ派”。部の合宿で那須や大島など、自然の豊かなところで体を動かすのが好きでした。自然に携わる仕事がしたいと思い、大学を卒業して、地元の掛川市に戻ってきたんです。

エコツアーや教職など、いろいろ検討しましたが、納得できる仕事はなかなか見つかりませんでした。そんなある日、山歩きのツアーをしている、静岡市の企業に話を聞きに行きました。「自然を知るなら山だよ」と言われ、そのまま富士山に連れていかれたんですよね。その時に見た、樹海の風景がもう忘れられなくて……

ー樹海というと、テレビでみるような怖いイメージがありますが。
実際には、歩くルートや標識もあって、散策できるエリアなんですよ。樹海は、今から約1,200年前の噴火でマグマに焼かれた土地が、復活してできた場所です。水を求めた樹木が、溶岩の上に根をはわせているので、自然のエネルギーに溢れていて神秘的な景観になりました。その一画に、ブナの原生林がとり残されているんです。足を踏み入れると、景色がパッと変わったのが分かりました。何とも言えず素晴らしく、「あぁ、これだ。自分が探し求めていたのは」と。その日をきっかけに、山のガイドになりました。


▲photo by Wataru Suzuki

頂上を目指さない富士山ツアーでは、樹海・下山トレッキングを、春と秋の2回開催しています。
10月20日に開催される次回のトレッキングは、こちら
 

「本当の幸せとは何か?」に気付くきっかけ

ー「頂上を目指さない富士山ツアー」は、鈴木さんの人生そのもののようですね。
世の中には、すごい人がたくさんいますよね。そういった人たちのいる頂上を目指すことには価値がありますし、頑張り続ければ辿りつけるのかもしれません。ですが、人生の価値はそれだけではないと思います。山を歩くと、そういうことを良く考えるんですよ。

頂上に行くほど、山の環境は厳しくなるものです。そこに暮らす動植物も限られてしまいます。一方で山麓や山腹には、それぞれの場所でそれぞれに生きている命があります。人にもそれぞれの生き方があるのだと思います。「頂上を目指さない富士山ツアー」が、そんなことを考える時間になってくれたら。そして、参加者のみなさんが、豊かに生きることに繋がってくれたら嬉しいなと思っています

●ツアー主催、問い合わせ先●
株式会社そふと研究室
TEL:054-272-0525
e-mail:info@soft-labo.net
地域にあふれる魅力的なコト・モノ・場所などを体験できる「地域発信型ツアー」を提供する旅行会社。「お茶摘み」「今川家ゆかりの地めぐり」ツアーなど、その土地の魅力を体感できる企画を展開している。

●プロフィール●
鈴木 渉 さん|1977年生まれ、スタジオやまもり代表。豊富な登山経験により見出した山の楽しみ方、自然とのふれ合い方を、山歩きのガイドや写真で伝えている。著書に、「頂上を目指さない富士山さんぽ」(ポプラ社)など。

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